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担当者ミスで看護師・保健師の国家試験「不合格」 救済はどうなる?
2013年04月24日 19時00分

厚労省は4月17日、看護師・保健師国家試験の受験者15人を誤って「受験無効」としていたことを明らかにした。受験者が提出した書類の取り扱いで、担当者のミスがあったことが原因だ。同省は改めて合否判定を行い、7人を追加合格させた。報道によると、田村憲久厚労相は記者会見で謝罪し、「(ミスのせいで)内定を取り消された人の就職先確保に最大限努力する」と述べたという。

看護師や保健師の就職は資格が必須条件とされていて、試験不合格なら採用を取り消されるケースが一般的だ。ただ、もともと合格率は高い試験で、今回も新卒看護師で94.1%、保健師で97.5%が合格している。また、発表は3月下旬で、合格後そのまますぐに働き始める場合が多い。

そういった背景もあり、「不合格」で内定を取り消された人の中には、すでに引っ越しや他業種への就職、予備校への入学など、大きな決断を下した人もいたかもしれない。そうであれば、単に後からの追加合格と就職先の斡旋だけでは納得がいかないだろう。こういった「もしミスがなければ避けられた事態」について、国はどこまで補償する義務があるのか。前川直輝弁護士に聞いた。

●国に賠償責任あり! 予備校費や給与差額、慰謝料なども含まれる

前川弁護士は「今回は、所管部署の担当者が受験生から提出されている書類を未提出と誤り、合否判定を受ける機会を奪ったのですから、本来なら合格していたはずの7名の方については、国家賠償法1条1項に基づき、被った損害の賠償を国に求めることができます」と述べる。

国賠法の対象となるのは、これらが国家試験だからだ。「いずれの試験も、法律に基づき厚生労働省が実施する試験ですから、国には、受験手続の有効性や合否判定を適切に行う義務があるのです」

では、国家賠償の「範囲」はどこまで? 前川弁護士は次のように説明する。

「両試験とも合格率が極めて高く、試験合格が就職の条件となるのが通例です。もし不合格により内定が取り消されてしまった場合には、内定先に就職していれば得られたであろう給与やその他一時金等の利益は、賠償すべき損害に含まれると思います。

また、不合格になってしまったために、新たに専門学校に入学し、入学費用・授業料を支払った方は、その費用が損害に含まれます。もともとの内定先ではない他の企業等に就職された方も、現在の職場に本意で就職されたわけではないので、給与条件の差額等は損害に含まれる可能性があります。

さらに、合格者であったのに不合格にされたということで精神的苦痛を受けるのは当然ですから、少額ではあっても慰謝料も損害に含まれるでしょう。過去の裁判例では国立高校受験の機会を奪われたことで、慰謝料を認めた事例もあります」

前川弁護士はその上で、「そもそも、受験者たちの努力を無にするようなミスは、お金ですべて帳消しにできるわけではありません。二度と同じ被害を生まないよう、他の試験も含めて適切なシステムを整えてもらいたいものです」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

厚労省は4月17日、看護師・保健師国家試験の受験者15人を誤って「受験無効」としていたことを明らかにした。受験者が提出した書類の取り扱いで、担当者のミスがあったことが原因だ。同省は改めて合否判定を行い、7人を追加合格させた。報道によると、田村憲久厚労相は記者会見で謝罪し、「(ミスのせいで)内定を取り消された人の就職先確保に最大限努力する」と述べたという。

看護師や保健師の就職は資格が必須条件とされていて、試験不合格なら採用を取り消されるケースが一般的だ。ただ、もともと合格率は高い試験で、今回も新卒看護師で94.1%、保健師で97.5%が合格している。また、発表は3月下旬で、合格後そのまますぐに働き始める場合が多い。

そういった背景もあり、「不合格」で内定を取り消された人の中には、すでに引っ越しや他業種への就職、予備校への入学など、大きな決断を下した人もいたかもしれない。そうであれば、単に後からの追加合格と就職先の斡旋だけでは納得がいかないだろう。こういった「もしミスがなければ避けられた事態」について、国はどこまで補償する義務があるのか。前川直輝弁護士に聞いた。

●国に賠償責任あり! 予備校費や給与差額、慰謝料なども含まれる

前川弁護士は「今回は、所管部署の担当者が受験生から提出されている書類を未提出と誤り、合否判定を受ける機会を奪ったのですから、本来なら合格していたはずの7名の方については、国家賠償法1条1項に基づき、被った損害の賠償を国に求めることができます」と述べる。

国賠法の対象となるのは、これらが国家試験だからだ。「いずれの試験も、法律に基づき厚生労働省が実施する試験ですから、国には、受験手続の有効性や合否判定を適切に行う義務があるのです」

では、国家賠償の「範囲」はどこまで? 前川弁護士は次のように説明する。

「両試験とも合格率が極めて高く、試験合格が就職の条件となるのが通例です。もし不合格により内定が取り消されてしまった場合には、内定先に就職していれば得られたであろう給与やその他一時金等の利益は、賠償すべき損害に含まれると思います。

また、不合格になってしまったために、新たに専門学校に入学し、入学費用・授業料を支払った方は、その費用が損害に含まれます。もともとの内定先ではない他の企業等に就職された方も、現在の職場に本意で就職されたわけではないので、給与条件の差額等は損害に含まれる可能性があります。

さらに、合格者であったのに不合格にされたということで精神的苦痛を受けるのは当然ですから、少額ではあっても慰謝料も損害に含まれるでしょう。過去の裁判例では国立高校受験の機会を奪われたことで、慰謝料を認めた事例もあります」

前川弁護士はその上で、「そもそも、受験者たちの努力を無にするようなミスは、お金ですべて帳消しにできるわけではありません。二度と同じ被害を生まないよう、他の試験も含めて適切なシステムを整えてもらいたいものです」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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